上野誠さん(東京)
家族に頼れず上京、先天的な持病から仕事もうまくいかず。
「ステップハウス」を経てアパートに入居中
ビッグイシュー基金の英語クラブで中心的な役割を担っている上野誠さん(48歳)。路上生活、ネットカフェ生活を6年続けていましたが、ビッグイシュー基金のプログラムも利用しながら、ご本人の努力でアパートに入居されました。その経緯と近況をお伺いしました。
- Q 路上に出た経緯を教えてもらえますか?
- 30代後半までのほとんどを北海道で過ごしていたんですが、警備員の仕事やタクシーのドライバーなどの仕事を転々とするなかで、仕事ができなくなって…。当時、両親は他界していて実家に1人暮らしをしていたので、頼れる身内もおらず路上生活になってしまいました。
- Q 仕事がうまくいかなかったのには何かご事情があったんですか?
- これは後になって分かったことなんですが、生まれつき、てんかんの症状があり、仕事中に意識を失ってしまうことがあって。自分ではそのことにも気づかないのに周りから「今、寝てたぞ」と言われてしまう。それで上司からの当たりも強くなり、対人恐怖症のようになってしまったんです。
- Q 持病などで苦労されたことは他にもありましたか?
- 意識を失ってしまうことで、駅のホームで椅子から転げ落ちてしまうこともありましたし、高校生の頃からノートをとろうと思ってもまわりからは寝ているように見えるので先生に怒られたり…ということがありました。小さいころから気持ちの浮き沈みが激しくて人間関係がうまくいかないのも持病が関係しているのかな…と思います。
- Q ビッグイシュー基金と関わるようになったきっかけと印象はどんなものでしたか?
- 東京の事務所で軽食つきの説明会があるというので、お腹もすいていたし話だけでも聞こうかなと思って伺ったのがきっかけでした。ビッグイシューはスタッフもみんな親切だし、当事者同士の距離感も心地いいなと思います。スタッフに病院や支援機関に同行してもらえるのも心強いです。
- Q 上野さんはビッグイシュー基金の「ステップハウス」を利用してアパートに入居されましたが、ステップハウスを利用したきっかけを教えてください。
- 自分の場合、アパートに入るとひきこもってしまうんじゃないかというのが不安で、なかなかネットカフェ生活をやめるという踏ん切りがつかなかったんですね。ネットカフェであれば、決められた時間になれば移動せざるを得ないので。
だけど、ネットカフェの環境は悪くなってきたなとも感じていたし、「そろそろ畳のうえでごはんが食べたいな」という思いが募って、ステップハウス利用を決めました。※東京のステップハウスについてはこちらの記事をご参照ください。
- Q ステップハウスでの生活はいかがでしたか?
- ステップハウスに入ってからは、「お風呂にゆっくりつかれる」「足を伸ばして周りの騒音を気にせず寝れる」というのがとても嬉しかったし、安心感が違いましたね。家事や家計簿をつけるようになって生活が落ち着いたな、とも思います。
数か月が経つと、外出するのが億劫になって引きこもりがちになってしまった時期もありましたが、毎日事務所に来る用事を作るなど、スタッフと相談しながらアパート入居に向けた準備をすすめることができました。 - Q 6年ぶりにアパートに入居された感想と近況を教えてください。
- 近くに弁当屋さんを見つけて嬉しくなったり、散歩がてら「カフェ・潮の路」に行ってみたり、引きこもらずに生活できるように心がけています。基金での英語クラブもいい気分転換になります。アパートに入れたことはとても嬉しいけれど、まだ実感がないのが正直なところですかね。今後のことはゆっくり考えていきたいです。
※この声は2018年9月時点のものです。現在は状況が変わっていることがあります。