「空き家」と「住宅困窮者」のマッチング事例―ステップハウスの実験的事業
ホームレス状態の人をはじめ、潜在的に住まいを失うリスクを抱えた人々が「安定した住まい」を確保、維持することを社会がどうサポートできるのか。
基金では、全国で846万戸(2018年総務省調査)と言われる「空き家」の活用がカギになると考え、住宅支援に取り組む団体との連携や、篤志的な家主の方から提供された空き物件の活用を通じて、住宅困窮者と空き家のマッチングモデルを模索しています。
その第一歩として、ホームレス状態の人が初期費用や保証人不要で利用できる「ステップハウス」の実験事業に取り組んでいます。
「ステップハウス」とは?
連携団体や、一般の家主の方から提供される空き物件を基金が借り受け、ビッグイシュー販売者をはじめとするホームレス状態の人に、低廉な利用料(15000円~)で提供する事業です。
初期費用、保証人なしで一定期間(6か月~)利用でき、利用料の一部が利用者本人の積立金となります。たとえば利用料15,000円のステップハウスを半年間利用した場合、6万円が手元に残ります。このお金と、利用期間中に受けられる基金の各種サポートを併用して貰い、アパート入居や就職活動など、次の「ステップ」への一歩を応援しています。
これまで東京・大阪で合計7室を運用
東京では2014年から、一般社団法人「つくろい東京ファンド」と業務提携し、中野区の物件2室を、ステップハウスと緊急用シェルターとして2015年まで運用。その後、新宿区の物件「ふらっとハウス」内の2室を2019年まで同様に運用しました。2019年からは、新たに都内の空き物件1室をステップハウス「すまいるハウス」として開設。2021年まで2年間、運用しました。
ステップハウスはこれまでに10人が利用し、ここをベースに身分証の取得や、健康保険の加入などをサポートしました。シェルターは体調不良時の休息目的、東京マラソンによる路上整理や、大雨・台風時など路上で寝られない時などにも、利用されました。
大阪では、2015年からこれまでに大阪 府内と尼崎市内で2物件を借り受け、ステップハウス5室、緊急用シェルター1室の全6室を運用しました。いずれも「空き物件を活用してほしい」という市民の方からのお申し出を受け、固定資産税と住宅の補修費の一部を利用料としてお支払いする契約でも受けました。尼崎市内のステップハウスは2018年9月の台風21号で被災したため、契約を解消。大阪府内の1室も、家主さんがかねてより「子どもを支援する活動に使いたい」と考えておられ、その準備が整われたため2021年にお返ししました。随時、家主さん、利用者と話し合いながら、柔軟に運用を進めています。
2015年の開設以来、2022年2月までに31人のホームレス状態の人がステップハウスを利用し、ここを拠点に、身分証の取得や通帳作成、携帯電話の購入、国民年金の申請・受給、就職活動などに取り組みました。そしてここから、積立金を元手に民間アパートやシェアハウス、簡易宿泊所などの低家賃住宅に転居しています。
また、短期で利用できる緊急用シェルターは、体調不良や、各種の支援につながるまでの居所として、利用されています。
ビッグイシューオンラインに掲載された、ステップハウス利用者のインタビュー記事も併せてご覧ください。