ホームレスの人たちの声(大江さん・大阪)

(写真:横関一浩)

大江さん(大阪)

障害、アルコール依存、多様な困難を抱えながらも
ホームレスサッカー日本代表チーム“野武士ジャパン”の一員としてパリへ

Q ホームレス状態になった経緯は?
もともとは京都の北部の田舎の出身です。脳性マヒで、生まれつき左手に障害があるんですが、それで小さいころからいじめられたり、田舎であまりいい思いをしてなくて、学校を出た後、各地を転々としながら住み込みで働いていました。一人で生活が苦しかったのもあって、アルコールに逃げることもありましたが、なんとか食べるには困らない仕事をしていました。しかし、10年ほど前に鳥取で派遣社員として働いていた時に、給料の未払いなどがあって雇用先ともめて大阪に出てきました。「仕事を探そう」と思いハローワークに相談したら、「家がなければ、まず施設に」と言われて自分はホームレスなんだと自覚しました。幸い、すぐに大阪市内の自立支援センターという施設に入ることができましたが。
Q ビッグイシュー基金と関わるようになったきっかけは?
施設にいると、一応食事や寝るところが提供され、仕事を探す支援もしてくれるんですが、なんせあんまり娯楽が少ないんです。その時に、ビッグイシュー基金がフットサルの練習を施設の近くでしていると案内されて、参加するようになりました。練習に参加していると「ホームレスワールドカップというのがあって、今年はフランスであるから出てみないか?」と言われて、なんとなく面白そうやからと頑張っていたら代表に選ばれました。
Q ホームレスワールドカップで印象に残っていることは何ですか?
自分は当時、ホームレス状態に加えて、アルコール依存と診断されていましたが、ワールドカップの参加者には、同じようにアルコール依存を抱える人も多くいました。通訳の人と一緒に各国の依存症の当事者の人と話した経験は、今でもお酒を飲まずに頑張る励みになっています。大会自体は、実は1勝もできず悔しかったけど、世界中の人とボールを通じて交流できて楽しかったです。
Q お酒はどれくらい飲んでいないのですか?
ワールドカップの前からやからもう9年ぐらいになります。お酒があかんっていうより、腹が立ったり、精神的に不安定になったときに、逃げる先が酒しかないのがダメなんですね。今では、みんなとフットサルをやったり、卓球をやったりっていうのが、ストレスの解消になっています。
Q 2018年5月に開催された「第1回ダイバーシティカップin関西」にも参加されましたが、いかがでしたか?
海外だけでなく、国内や関西で、こうやって多様な人がスポーツを通じて交流できる機会があって本当にうれしかったです。日本も東京オリンピック・パラリンピックを控えていますが、そういった大会に出られるのは、もちろん本人の努力もあるけど、障害者も含めて恵まれている環境にある人だけだと思います。でも、自分みたいに、いろんな困難を抱えている人もスポーツの場を求めています。そんな人でも参加できるダイバーシティカップはすごく価値があると思うし、今後は自分も手助けできる側になっていきたいと思います。参考:第1回ダイバーシティカップin関西のレポート:「勝つこと」と「楽しむこと」は共存できる。人と人をつなぐ「社会性スポーツ」の新たな試み
Q今後の目標はありますか?
今は、仕事と言えるかわからないけど、作業所に通いながら、介護の資格をとる研修を受けたりしています。将来的には、介護の仕事について、自分みたいに障害を持っている人でも、その人らしく生きれるようなサポートをできたらいいかなと思っています。もちろん、ビッグイシューのクラブ活動も盛り上げていきたいですね。

※この声は2018年9月時点のものです。現在は状況が変わっていることがあります。

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